ナノグラフェンで生み出す量子コンピュータ

有機物にはまだ知られていない様々な機能が現れる可能性があります。

ナノグラフェンと呼ばれる芳香族分子では、炭素原子の繋がりを設計することで、量子コンピュータを作る部品になってくれる興味深い特性が現れます。JAXA(宇宙航空研究開発機構)の森下直樹研究員と当研究室の共同研究によると、適切に水素化されたナノグラフェン分子を作成することで、縺れた量子ビットを与える磁気的量子状態が得られることが分かります。

この分子は、鎖状にS=1スピンが並んだハイゼンベルグ反強磁性状態を提供してくれます。それと同時に、適切な位置にこの電子磁性状態を観測することができるプロトン(水素原子の原子核)が配置されており、外部から照射した電磁場に対してこのアンテナのように働くプロトンが、電子スピンの状態を教えてくれます。そこで、ナノグラフェン分子を合成すれば、量子計算を行う縺れ状態と、その観測装置を、同時に作ってしまうことになるのです。

このように、新しい物質を生み出すことは、同時に新しい機能や、役に立つ仕組みを社会に提供していくことにも繋がると、言うことが出来るでしょう。

資料提供:兵庫県立大学理学部 草部研究室

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